週刊現世7号 ■「外市」後記号■

レポート 外市の日


最近、というか、もう十年以上も「緊張して眠れない」なんてことは一回も無いのだけれども、昨日、つまり外市の前日は全く眠れなかった。1時間だけようやく眠り、朝8時に起きた。軽く食事をして、8時40分ごろ自宅を出る。自転車で安藤書店裏の道を新目白通りへ下り、都電の線路を越えて神田川にかかる面影橋を渡り宿坂を上る。「手創り市」の準備が進む鬼子母神の境内を横に見ると、まもなく往来座が見えてくる。開場2時間前の9時、すでに店主の瀬戸さんと、経理主任まこちさんが作業をしている。みんなが来る前にある程度、使わない什器を移動して場所を確保する。


 10時になると、参加者がどんどん集まってくる。立石書店牛イチローが来たので、本格的な並べに入る。前日すでに並べている火星の庭、現世、往来座、立石の本が入った大棚を明治通り側へ4台。このメンバーも棚に入らない本があふれているので、箱に入れたり、ラックに並べたりして並べる。池袋側の端には旅猫雑貨店・金子さんのお兄さんの刃研ぎ堂のコーナー。すでに砥石が並び、店内からお兄さんが水を汲んでくる。なんか、ステキな光景。明治通り側には旅猫さんのコーナーも。柱に小さなほうきやちりとり、買い物籠なんかが吊るされる。池袋側から「包丁・古本・雑貨」という並び。「市」っぽくていいです。往来座の「外」は二面あるのです。通りの折り返し部分にポポタムさんとリコシェさん、「わめぞ絵師」武藤さん、それから退屈男君。これらの参加者は小さな台使用。退屈君、並べたら足りず。「もう一回持ってきます!」と自宅へ戻っていった・・・。折り返した側の壁には一箱コーナー。岡崎さん、南陀楼さん、ハルミンさん、謎の覆面店主をはじめとする強力メンバー、さらには往来座お客様オールスターズの方々を配置。開店ギリギリまで準備。帳場も製作。お金をレジに。


11時、いよいよ開店。20人ぐらいのお客様でスタート。古本市常連の方はいませんでした。凄いよ、『夢声戦争日記』の元版揃が全部で1500円とか、講談社文芸文庫のいいところが200円とかなのに昼過ぎまで残っているという(笑)。で、違う商品がどんどこ売れていくのだ。新鮮です(笑)。しかし風が強すぎ。寒いよぉ。


牛イチローと立ち話。おそらく1時過ぎからが勝負だと話していたが、ちょっと出足が鈍くないか。レジチェックをしてみると、1時間でそこそこは売れている。そうか、結果だけ見ると悪くはないのか・・・。もうちょっと爆発感がほしいところ。いや、他はともかくこのイベントだけは失敗したくない。瀬戸さんの笑顔で終わらなければ意味がない。あいかわらず緊張しながら時間は過ぎていく。牛イチローのパートナーであるナベちゃんが呼び込み。さすがオペラ歌手、街に美声が響き渡る。このたびナベちゃんはイベント時限定で「わめぞ歌手」として活動することに決定。そのうちにどこかで「アメージング」ならぬ「ワメージンググレイス」を披露する予定。お楽しみに。リコシェ阿部ちゃん、退屈君と近くのうどん屋、硯屋で昼食。うーん、おいしい。


帰ってきた2時少し前ぐらいになると、だいぶ人が増えてきた。外だけじゃなくて一番気になる往来座店内の売り上げを聞いてみる。こちらはかなり順調らしい。女子大生バイトのなつきちゃん、それからコミネ君も少し興奮気味。外の売り上げは「まあまあ」か。ここからが勝負。瀬戸さん、じっとしていられないようで外をふらふらとさまよっている。悪いけど、ちょっと面白かった。火星の庭さんの売れた棚に、下の箱からどんどん追加している。刃研ぎ堂も繁盛している。近所からの持込も。その合間に説明していただいたり、実際に研いだ後の包丁やはさみの切れ味をためさせてもらったり。いやぁ、感動ものですよ、紙を包丁で、布をはさみで切るのがこんなに心地よいとは。ちなみにお兄さん、「週刊現世」で勝手につけさせてもらった「研ぎ猫」の愛称を気に入ってくれたそう。


往来座の目の前はバス停。途中で、ここに止まるバスを見ていると楽しいことに気づく。バスが止まると、みな北朝鮮マスゲームのようにキョロッとこちらを見る。そして全員の視線が研ぎ猫さんへ行くのだ(笑)。3時過ぎ、レジ点検。金額の伸び率が急上昇している。中で清算した外の品物の金額を牛イチローが報告してくれる。あぁ、もう大丈夫。目標は間違いなく達成できる。やっと安心感が。なので、ちょっと会場を離れ旅猫さんへ行くことに。さっき、あるお客さんが「旅猫雑貨店行ったけど人が多くて入れなかった」と聞いたので、どんなもんでっしゃろと。さすがにもう「入れない」ということはなかった。金子さんと少し話す。開店以来の売り上げ新記録だそうだ。良かったなぁ(後で聞いたら目白のポポタムさんも良かったそうだ)。閉会も近くなった会場に戻ると、南陀楼さん、内澤さん夫妻が。南陀楼さん、今日退院したばかりだというのに・・・。というか元気そうだ。サンシャインとあわせて「いやぁ入院費が出ちゃったよ!」。なにものですか!岡崎さんもやってくる。7時少し過ぎ、無事終了。往来座はまだ営業中だが、全員で撤収作業。小台、箱組はすぐに終わるので、先に打ち上げへ行ってもらう。残った牛イチロー往来座スタッフと早稲田への搬出、棚戻しなどの細かい作業を。あるていど終わって、会計を見にいく。袋に現金とスリップを入れて、とりあえず自分が打ち上げ会場の「魚河岸亭」へ向かう。で、配布。わいわいと金額を見せ合ったりする。遅れて瀬戸さん、牛イチローが。瀬戸さんのぎこちない挨拶で乾杯。和やかな飲み会になった。いい日になった。


 今回はちょっと様子見ということがあって、土曜日1日だけの開催でした。しかしながら、外と中の売り上げをあわせると、昨年末に開催され大成功に終わった立石書店での「古本市/夜・昼」の売り上げの8割という金額を記録することができました。あのイベントは2日間開催だったので、1日でそれだけの売り上げになったのは上出来だと思います。まだまだ問題点が山積みだということも考えると、今後が楽しみでもあります。次回の開催もすでに決定しています。ゲストも決まりました。来週の「週刊現世」で発表します(ゲストはもうちょい先かな)。今後は土日の2日間開催でやっていくつもりです。そして、今回来ることができなかった方のために、小さなイベントも予定しています。これも来週には発表予定。


 ご来場いただきました皆様に参加者一同、心より御礼申し上げます。今後とも、よろしくお願い申し上げます。


【追記】
翌日の日曜日。最後の復元作業のために往来座へ。瀬戸さん、まこちさんと作業して、のむみちさんを交えてささやかな打ち上げをした。昨日とはまたちょっと違う楽しさに満ちた飲み会だった。これからも彼と、「わめぞ」のみんなと、他の参加者の方と、少しずつでも「外」へ向かいたい。悩んでいる暇があったら前へ出て行きたいと思う。そんな元気をいただきました。


そういえば自分、売り上げトップだったんです。立石の時より3割増。いぇい。

掲載情報
『WiLL』4月号=「早稲田古本劇場」(2月26日発売)
本の雑誌』3月号=「古本屋セドロー君の午後」(発売中)


編集後記
ごめんなさい、古本仕事も原稿も締め切りだらけです・・・。細かい記事は今週もお休みさせていただきます。もうやだ〜。