仙台へ行けるということ

長かった、としかいいようがない日々でした。ようやく、仙台へ行くことができます。


あの日、揺れが収まって、ニュースを見て、仙台の皆さんのことが思い浮かびました。比較的早い段階でツイッターで皆さんの無事が確認され、火星の庭にたくさんの人が集まってきて暮らしていることなどがわかったものの、停電していることもわかり、あまり話しかけて余計なことで携帯電話を使わせてはと思いただ見守るしかなかった。連絡が取れないまま、とぎれとぎれの仙台からの情報を待つだけの日々。自分もみちくさ市の中止や、月末にせまっていた、あいおい古本まつり開催に向けてバタバタしている時期で、暇を見てはパソコンや携帯でツイッターを見ていた。もう、あんな時間は過ごしたくない。今になってなお、そう思います。


わめぞのメンバーは本当に火星の庭の前野さんにお世話になってきました。先日の「わめぞTV」でも話しましたが、第一回の外市のゲストは火星の庭で、それがきっかけで知り合ったのですが、その後ハルミンさん、海月さんのトーク司会で呼んで(というか許可して)いただいたり、Book! Book! Sendaiがはじまってからも一昨年、昨年と古本市として参加させていただきました。受け入れてくれる人がいる旅というものが、とても楽しいということをそのたびに感じさせてもらいました。


4月2日の夕方、突然に火星の庭の前野さんから電話がありました。今よりもなお原発関連の情報が少なかった時期だったので、愛娘のめぐたんを関西にあずけてきた帰りに東京に寄るから会えませんか、との電話だった。声が聞けただけでうれしかった。荻原魚雷さんと一緒とのことで、高円寺に立石書店の岡島さん、武藤良子と向かった。そして、コクテイルで話した。いつも通りなわけはないのだけれど、前野さんはいつも通りに受け答えしてくれた。何を話していいのかわからなくて、くだらないことばかり話した。岡島さん以外は、ずっと話していて終電を逃した。前野さん、武藤と、魚雷さんの仕事部屋に泊まることになった。ちょっと飲んでいるうちに、武藤が寝て、前野さんも倒れるように眠った。自分はなんだか眠れなくてボーッとしていた。前野さんは繊細だけど豪快な人なので、普段はあまり気付かないのだが、布団から少し出ている腕を見ると本当に細い。なんだか前野さんの寝顔を見ていたら、あまりに自分の無力さに悲しい気分になった。朝方、前野さんも予定があるだろうし行動を束縛しても悪いので、始発が動き出した頃、無理やり武藤を起こして寝ている前野さんに別れを告げて帰ってきた。それが今のところ前野さんに会った最後だ。


その後、わめぞの花見があった夜、帰りにツイッターを見ると、今年のBook! Book! Sendaiの開催が決まったとあった。でも、その時に行くとか行かないとか、そういうことは考えられなかった。仙台の皆さんもその時点では仙台で「やる」ということ以上のことは考えてなかったでしょうし、4月の最初は自分たちの予定もかたまっていなくって、それこそ調整するので手いっぱいだったこともある。わめぞの仙台行きというのは、いつも立石書店の岡島さんあってのこともあり、受け入れる先の仙台のこともあるので、気にしてはいるが何もなく時間は過ぎて行きました。ある日、岡島さんの方から「仙台どうなのかな」と言ってきました。普段あまり最初の一歩を岡島さんの方から言ってくることはないので、ちょっとビックリしました。「行くの、大丈夫ですか?」と聞いたら「なんとでもしますよ」と言う。ある日、思い立って、高田馬場のツタヤの前から、最悪、一箱での参加でもいいかな、と思いながら前野さんに電話して「行っても、大丈夫ですか・・・」と聞いてみた。「いらっしゃい」と言っていただきました。その日から、昨年までの記憶が、一気に3.11をまたいでつながりました。それでも不安になって、五月の終わりについつい「本当に迷惑じゃないですか?」というメールを送ってしまった。バタバタしてもしようがないのだが、やっぱり不安だったのだ。そうしたら前野さんから「迷惑じゃないし、もし迷惑でもいいじゃない、今までの付き合いがあるんだから迷惑かけてもいいんだよ」というメールをくれたのだった。夜中でしたが、なんだか涙が止まりませんでした。


結局、東京で、なにか力になるどころか、小額の金を募金しても、なにかボランティアで行けるわけでもなく、モヤモヤしている自分を助けてくれるのはまたまた仙台で。なんとかほんの少しでもSendai Book Marketを盛り上げることができればいいのですが。なんだか、仙台の記憶と言うと、青葉城とかじゃなくて、火星の庭のある定禅寺通りの木漏れ日だとか、勾当台公園のベンチで寝ころんだこととか、前野さんと夕飯の買い物を仙台朝市に買いに行ったこととか、観光だけじゃ味わえないこと、たくさんあって本当にうれしいです。そしてまた「本」と一緒に仙台へ行けること、うれしくてたまりません。今までがある人にはそのまた続きが、今年初めての人にはこれからの続きが、またここからたくさんの物語を各自が持ち帰って、いろいろなところで新しい物語が始まってほしいと思います。B!B!Sの皆さんだけじゃなくて、仙台のお客さんも含めて、もちろん一部しか理解できないとは思いますが、それでも丁寧に気持ちを感じたいです。


当日、Sendai Book Marketが終わった瞬間のその気持ちを、必ず東京に持ち帰ります。よろしくお願いします。


Book! Book! Sendai 2011 公式サイト
http://bookbooksendai.com/2011/


ust わめぞTV 仙台特集
※録画ありますが、音声ミスにより始まるまで1分40秒ほどかかります。ご注意を
http://www.ustream.tv/channel/wamezo