南陀楼さんのこと

昨日、原書房の百町さんが、南陀楼さんの新刊を店に持ってきてくださった。『町を歩いて本のなかへ』。エッセイや書評、ルポなどを収録したものである。ここに「早稲田で読む」が収録された。これは以前、自分が編集していたメルマガ「早稲田古本村通信」で「早稲田で読む、早稲田で飲む」というタイトルで連載していただいていたものだ。一番最初のものが2003年5月だから、もう14年も前になる。当時から「本にできたらいいな」と南陀楼さんは言っており、ようやく、ということになる。ある時期の早稲田カルチャーを確実に切り取った内容で、今読むとなおのこと面白かった。


南陀楼さんとの出会いは2002年になる。早稲田青空古本祭の目録「古本共和国」(読み物と古書目録が一緒になっている冊子。向井が編集していた)に寄稿していただいたのが最初だった。少し前に知り合っていた早稲田でデザイン事務所を持っていた松本八郎さんの紹介で、いわゆる「sumus」同人の方々と交わることになる。この年は「幻の古書店街」という特集で、各人に架空の古書店になってもらい、架空の古書目録を披露してもらうというものだった。そこに南陀楼さんにも寄稿してもらったのだった。その後、確か何かの古本に関する資料をコレクターでもある南陀楼さんに「いりますか?」と連絡して、「飲みましょう」となり、交遊がはじまった。その後、南陀楼さんが始めたフリペ「モクローくん通信」に連載させてもらったりした。そもそもこのブログ、以前は日記だったのだが、それは南陀楼さんみたいなブログをやってみたいと思ったからである。今とは違い、書物ブログと呼ばれるブログがたくさん生まれており、退屈男が作っていた「はてなアンテナ」の本街探偵は楽しい情報の集積地だった。そんな新しい感覚で本の世界を遊んでいた人たちがリアルに出会うことになるのが2005年にはじまった不忍の一箱古本市だった。2回目まで参加したが、箱ひとつでこれだけ売れる、という衝撃は凄かった。今までとは違う世界があるということを見せてもらった。


その後、自分は「わめぞ」の活動をはじめることになり、進むごとに路線もだいぶ変わってきてあまり会うこともなくなってしまったが、今まで書いた通り、自分がいろいろな人と出会うようになったのも、その活動も、足場はすべて南陀楼さんに作ってもらったようなものだと思っている。今回、この本を読んで、行き詰っていた自分と、それを壊してくれた南陀楼さんとの楽しかった日々がたくさん書いてあった。本には今現在進行形のブックイベントのルポもある。そういう興味で読む人にこそ、「早稲田で読む」を読んでほしい。一箱古本市以前の南陀楼さんには、すでに一箱古本市のすべてがある。初単行本の『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)も、おすすめだ。
町を歩いて本のなかへ ナンダロウアヤシゲな日々─ 本の海で