缶詰

特に変哲もない、その辺の百円ショップで売っているような、イワシの缶詰が手元にある。先ほど、店頭の百円均一本を4冊お買い上げになったお客様が財布をチェックしたところ三百円しかなかった。手元にはいま、それこそつい今しがた百円ショップで買ったばかりの、いくつかの缶詰しかないのだという。ちょっとした買い物だったから、財布をもたずポケットの金で足りると思いそのまま出てきたらしい。冗談で、缶詰ひとつで手を打ってもいいですよ、と言ったら、本当ですか? と喜んでOKということになった。こちらから言った手前、それで決まりとなった。


それでも、自分としては悪い取引ではなかった。今日は一日独り店番。だから、店で弁当という日だ。今日は卵焼きと冷凍の焼売というおかずだったので、イワシの缶詰の汁っ気がほしかった。白米の上に、ドバッとぶちまけた。残った汁を卵焼きにも少しかけた。決して豪華ではないが、いい弁当になった、気がした。百円ワゴンの本からはじまった、ちょっとした日常の隙間だからこその隠し味なんだな、このおいしさは。まぁ、今日はこれぐらしか、いいこと無かったんだけどね。いいこと、なのかな(笑)。