あいおい古本市企画、高橋美香さんの写真展&トーク

3月26〜27日開催の「あいおい古本市」、現在各セクション担当がいろいろと開催に向けて調整しています。運送ひとつでもあれこれ大変です。やれる範囲のベストを目指します。各イベント、予約受付中です。


その中で、あいおいブックラボの天野さんの企画、写真家の高橋美香さんの写真展「パレスチナ・そこにある日常」とスライドトーク「がんばれ、ハイサムとうちゃん」についての原稿をもらいました。天野さんは自分の2冊目の本『早稲田古本屋街』の担当編集者です。読んでいただいて、興味を持っていただければ幸いです。今、この試練の時を迎えた日本に、高橋さんが見てきたものを必要とする人がたくさんいるのではないでしょうか。よろしくお願いいたします。


イベント予約は⇒ http://aioibooklabo.blog.shinobi.jp/

こんにちは。あいおいブックラボの天野と申します。まずは、なによりも3月11日の地震で被災された皆さまへ、心よりお見舞い申し上げます。一日でも早く、日常生活を取り戻せますよう、楽しい気分を思い出せますよう、微力ながら応援させていただきたいと思っています。


来たる26・27日は「あいおい古本市」の2日間、会場でお待ちしています。今日は、その1日目の最初に行なわれるイベント、写真家の高橋美香さんのスライドトーク「がんばれ、ハイサムとうちゃん」のご案内とイベント開催の経緯などを少しお話させていただきます。(少し長いです、すみません)


昨年の11月に高橋美香さんは初めての著作『パレスチナ・そこにある日常』を上梓、私はその担当者として本づくりの伴走をしました。美香さんとの出会いは、私も参加している「アフガニスタン山の学校支援の会」の運営をとおして生まれました。代表は写真家の長倉洋海さんで、毎年アフガニスタンのポーランデにある学校を訪問していますが、その訪問の旅に、何度か美香さんは同行しています。そのレポートを会の機関誌に書いてもらったことが私のなかで本づくりの芽となりました。


そして今回、縁あって、あいおいブックラボに参加することになり、企画をいくつか考えるなかで、お年寄りから子どもまで幅広い年齢の方にいらしていただきたいこのイベントに、「高橋美香写真展」は、ぴったりだと思いました。とにかく、彼女の撮る写真がいいのです。笑顔は呼応してうまれるものだと思います。写真に写る笑顔、それは、カメラを向けている写真家に向けられているものだと言っても過言ではありません。美香さんの写真をみているとき、その笑顔を引き出した彼女との物語を想像してしまうのは、きっと私だけではないでしょう。古本市では入り口のタウンホールで写真展を開催しますので、ぜひ、みにいらしてください。


そんな写真家、高橋美香さんは中東政治を学び、卒業後エジプトへ語学留学(アラビア語)しますが、そのきっかけは中学生のときにみた「難民」についてのテレビ番組でした。中高生時代はとにかく学校がつまらなくて、課外活動にいそしんでいた美香さんはそこで独自のバイタリティを育てました。バンドの追っかけやその会報づくり(もちろん自主制作)、世界に出ていくための基本的なものはすべてその時期に培った、と私は睨んでいます。


パレスチナのビリン村、ここがハイサム一家が住んでいる村です。ここにはイスラエル軍によって勝手に作られた「分離壁」というものが存在します。ただ単純に壁が造られたというだけではなく、昼夜を問わず家宅侵入される、因縁をつけられて逮捕・勾留される、など、その日常は不条理だらけのとても厳しいものです。パレスチナの彼らは週に一度、非暴力の分離壁反対デモを行なっています。催涙弾や実弾が撃ち込まれるなか、とにかくへこたれず、あきらめず、闘う彼らのなかに、カメラを手に、美香さんは飛び込んでいきました。そして、両手を広げてまず歓待してくれたのが、ハイサムとハムディでした。(ハムディは私がその写真を見た瞬間「か、かっこいい…」と思った若者です。余談でしたね)


今回のスライドトークのタイトル「がんばれ、ハイサムとうちゃん」は、そんなビリン村の人びとの象徴としての「ハイサム」をタイトルにしたものです。書籍『パレスチナ・そこにある日常』でもいちばん大事にしたのが、彼らのおかれた状況以上に「彼らの日常」です。自爆テロなどのニュースに覆い隠されている、
私たちと同じように、恋をしたり、くだらない話で盛り上がったり、悩んだりする、そんな若者たちの「横顔」です。その日常のなかに「自分たちの土地を、生活を、家族を守る」という必然がある、それだけだということ。そこには、宗教や文化の違いなどを超えたそのもっと奥にある、「人」の姿があります。隣の兄ちゃんや隣のおじちゃんおばちゃんがいます。遠い国の遠い人たちの話が、こんなにも身近に感じられるのは、まさに「高橋美香」というフィルターをとおすからにほかなりません。


今回の写真展にさきがけて、作った本を持って美香さんはパレスチナを再訪しました。生活とは日夜刻々と変化する一面があるものです。その最新の報告も合わせて、スライドトークでしてくれることになっています。ぜひ、高橋美香さんの話を、声を、聴きにいらしてください。元気や力が湧いてくることうけあいです。お待ちしています。


最後にハイサムがskypeで美香さんに言った伝言の伝言を(美香さんのブログより)。


「『ミカ、日本のすべての人にBe strong!って伝えてくれ』と繰り返すハイサム、すべての人には無理だけど、身の回りの人には伝えていくよ。パレスチナの大変な状況にある友が日本にエールを送り続けていることを、伝えていくよ。」。


あいおいブックラボ 天野みか


高橋美香さんのブログ http://blogs.yahoo.co.jp/mikairvmest/


※写真はハイサムと2人の息子たち

パレスチナ・そこにある日常

パレスチナ・そこにある日常